仮設 不動産マイスターへの道

不動産売買契約書に貼付する印紙について

time 2017/05/22

不動産売買契約書を作成した場合には、印紙税を納付する必要があります。

印紙税の納税方法は、課税文書(この場合不動産売買契約書)に収入印紙を貼付し、当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で判明に印紙を消す方法で行います。売主・買主両方の印章で消すのが原則ですが、契約当事者が多数の場合にはいずれかの当事者のみでもよいとされています。

印紙を貼らなくても契約の効力には影響はなく、契約自体は有効に成立します。しかし、税務署に印紙を貼っていないことを指摘されると、本来の印紙税額+その2倍に相当する金額を追徴されることになります。さらに、印紙税法第22条では、「偽りその他不正の行為により印紙税を免れ、又は免れようとした者」は「一年以下の懲役若しくは二十万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と規定されており、たちまち前科が付いてしまいますので注意しましょう。

ところで、印紙税額の基礎となる「契約金額」ですが、基本的には税抜き金額を言います。
(厳密に言うと、消費税額等が区分記載されているとき、または税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に当って課されるべき消費税額等が明らかとなる場合には、その消費税額等は印紙税の記載金額に含めないこととされています。したがって、契約書に税込金額しか記載されていない場合には、税込価格となります。)

印紙税の納税義務者は「課税文書を作成した者」ですので、不動産売買契約書の場合は売主及び買主となり、連帯して納税する義務があります。そのため、仮に売買契約書の中で「印紙については各自が保有する契約書に貼付する」と規定されていて、自分が保有する契約書にはちゃんと印紙が貼付されていたとしても、もし相手方の契約書に印紙が貼付されていなかったときには追徴課税されることがあります。(これは、印紙を貼っていなかった当事者が倒産した場合によくある話です。)

不動産売買契約書は2通作成するのが一般的ですが、この場合には2通とも課税文書となるため、2通分印紙税が課せられることになります。そこで、「本契約書1通を作成し、買主がこれを保有し、売主はこの写し(複写機によるコピー)を保有する」というような文言を契約書に入れ、原本を1通だけ作成することで印紙税を節約しようということがしばしば行われています。

しかし、万一紛争が生じた場合において重要な証拠となるのが契約書原本ですから、それを一方当事者だけが保管するというのはあまりお勧めできません。できる限り各当事者がそれぞれ原本を保管するようにしたいものです。

金融商品取引法

プロフィール

中沢誠

中沢誠

不動産に特化した行政書士です。主に契約書・重要事項説明書等の作成、研修・セミナー講師等を行っています。